明治大のイベントは、手際こそ悪かったが、集まったメンツもイベントの内容も悪くはなかった。もし音響さえよければ99年一番のイベントとしてやってもよかったかもしれない。なんたって工藤あさぎと平井理央だぞ!(笑)って最後はそこに行き着くわけだが、何はともあれ舞浜へ向かう電車の中で工藤あさぎの「ツライレス」を口ずさんでいたのはこりゃ仕方のないことだった。
とはいえ、これから向かうチェキッ娘のラストライブがただの残務処理と化していたわけではない。我々はそこまで無慈悲ではない。一年間遊んでくれた仲間に対する礼を失するわけにはいかない。中央線から京葉線のホームへ向かう、長い通路を歩きながら私はチェキのことを、これからはじまるラストライブのことを考えていた。なんといっても「泣いたモン勝ち」である。観客に感情を強要するこの挑戦的な態度(笑)に、まず身構えないわけにはいかない。普段からチェキの送り手に対しては厳しい評価を下している私にしてみれば、このラストライブをどう見るか、それでこの一年間の熱い戦い(笑)の結果が出るのだから。
てなことを考えつつ、「こりゃギリギリだねぇ」と連れのみつさん(仮名)と話しつつ、ようやく大深度地下ホームの京葉線に乗り込んだ。…するとドア付近に見慣れた顔が(苦笑)。山奥にベッキーを見にいったはずの(笑)男爵(仮名)とめざ女さん(仮名)じゃないですか!なんで同じ電車に!てゆーか、もう遅刻じゃん!(爆)などとひと騒ぎ。まぁ、電車より早くは着けないのだからおとなしく舞浜まで乗る。ベッキーのほうはなかなか見ごたえのある不思議なイベントだったらしい(苦笑)が、どう考えてもこっちの方がおいしいので(爆)散々自慢しておく。
JR舞浜駅の改札外の時計(笑)
舞浜駅に到着。階段を降り、改札を出る。時計はもう5時55分だ。周りにはチェキ男らしい人影は見えない。てゆーか、人影自体が、ない(爆笑)。バス停へいくが時刻表を見てもNKホール行きのバスは30分後にしかなく、とにかく階段下にたむろしているダフ屋の兄ちゃんたち以外は誰もいない(苦笑)。こりゃタクシーかなと思っていると駅から階段を降りてくるあやしい人影が(笑)。…賢さん(仮名)だった(爆)。なんだよ、結局「極悪おはチェキ五人衆」が勢揃いじゃん!しかも全員遅刻で、全員集合とはどういうこった!毒電波でも届いたんかい?(苦笑)。
歩くわけにもいかず結局タクシーへ。運転手さんにはライブの終わる時間を聞かれる。…チェキ男がタクシーなんか使うのかね、と思いつつも適当な時間を答える我々。NKまでの途中、グッズを持って徒歩で帰るチェキ男を多数発見。下川みくにファンか?(笑)追加だけ見て帰るファンの意外な多さにびっくり。…まぁ、チケット代高いし。ってゆーか、自分らも夜しか見ないしね(^^;そして、NKに到着。
NKホールへ向かう4人。私はこの後、一人残った。
みつさん(仮名)にチケットをまとめ取りしてもらっていた3人はみつさんと共にホールへ向かった。それを見送る私。そう、私はここである男に会わねばならなかったのである。静まり返ったホール前の広場は、ときおりカレンダーをしっかり抱えて歩き去るチェキ男を除いては人影もまばらだ。私はベンチの前の街燈に寄りかかり待った。
「久しぶりだな」
男の声は不意に背後から聞こえた。迂闊だった。遠い昔、ラオスのジャングルを駆け巡っていたときのカンはもう俺にはなかった。当たり前のことだった。あんな生活をしていたのはもう……。振り向かずに、道路の方を向いたまま、俺は小声で答えた。脇のホルスターを意識しながら。
「まさかお前が来るとはな」
「ふん。すっかり落ちぶれたな。かつて"黄色い悪魔"と呼ばれたお前が…」
「すべては終わったことだ」
男は何かを言いかけたが、黙ったまま小さな封筒をよこした。
「約束のものはそこにある。代金は…カンパニーの口座が使える。」
「…もう会うこともないだろうな」
「あぁ」
振り返ると男の姿はもうなかった。
時間がなかった。俺はホールの側面に沿って走った。カーキのバッグから指向性対戦車地雷を取り出す。周囲を確認した。大きなガラス窓の枠に吸着面を当て時限信管を作動させてから、植え込みの段差に身を隠す。爆発が発生した。わずかに爆風を感じる。破片はほとんど飛んでこなかった。ホールロビーのガラスは破壊された。俺はM3Sベルの槓杆を操作し30連弾倉から45ACP弾の初弾を装填した。まだ爆発の熱気があるロビーに侵入する。人影はない。
わずかに発汗しているのは、内心が抑えがたいほどの興奮でみたされているからだった。このような環境こそ俺が生きるべき場所なのだった。そのことを実感していた。
右側から叫び声があがった。「野郎、こっちだ!殺せ!」
本芸の黒服が四人、視界内にあらわれた。俺はどのように反応すべきかコンマ一秒以下の時間で勘案し、決断した。M3Sベルをかれらに向ける。右手の人差し指にかけた力を調整しながら点射をおこなった。無音にちかい機関短銃からはなたれた銃弾をうけた男たちは三秒で全員が絶命した。
俺は足取りをはやめた。遠くから、聴き慣れた歌声が聞えてくるような気がする。あれは幻聴なのか。地雷の爆発の轟音が耳に残って…。再び右手から男たちの声がする。銃撃が激しくなった。中二階への階段の背後に回り閃光手榴弾を取り出す。安全ピンを抜き、射撃している男たちへと投げつけた。床面にしっかりと伏せ、瞼を閉じた目を手でおおった。
小さな爆発音がおこり、闇が白くはじけた。
悲鳴がいくつも聞こえる。目が、目が、という罵声もあった。俺はM3Sベルを声のする方向へ向けた。弾倉二個を消費し、全員を射殺した。俺は壁に向けて走った。入り口の厚い扉の脇にたどり着き、壁を背に内部へ破片手榴弾をほうり込んだ。耳を被う。爆発。
…ここはどこだ…。
NKホールのスタンド席。手にはチケットがある。周囲には大勢の客。立ち上がっている。暗いホール内、ギラギラとしたスポットライト群。呆然と通路に立ち尽くす私に、黒服の係員が近寄ってくる。身構えるが…私の手には銃はなかった。
係員の誘導で、スタンド席センター右寄り最後列、に座る。ステージではリトマメが歌っている。矢作ちゃんの生き生きとした表情…。そう、そうだ、ステージ背後にはファーストライブでも使われた大型スクリーンがある。そこにリアルタイムでステージの様子が流されているのだった。ステージのセッティングは、ファーストとほぼ同じ。なんのことはない、ファーストライブは、このラストライブのリハーサルだったのだ。
座った私は、目の前で起こっていることを把握しようと躍起になっていた。これは間違いなく"チェキッ娘のラストライブ"なのだ。今日、旅立ったチェキッ娘は、もう二度と見ることは出来ないのだ。…しかし、どんなにその事実を自分に言い聞かせても、特別な感情は湧き起こってこなかった。私は自分のすぐ目の前にあるホールの天井を見つめながら考えている。
どんなアイドルでも、ファンとそのアイドルだけのストーリーを持っている。ファンは確かに、そのアイドルの容姿や性格に惹かれはするだろうが、一番大事なのは、ファンである自分とタレントの関係性だろう。これは誤解をされては困るが、アイドル本人に「認識される」ことのみを指すわけではない。アイドルにおける関係性は、主にファンが自分の中に構築するものだ。それを妄想と言ってしまえばそれまでだが、アイドル本人がファン全員を認識できる一部プレ系以外でもちゃんとアイドル(システム)が成立しているのを見ればわかるように、誰もが普通に出来ることなのだ(モーニング娘・SPEED)。
そういう関係性にとってもっとも不快なこと、といえば"関係性への外部からの介入"だろう。関係性は決して恋愛感情のようなものではないが、それにしても第三者の介入は拒むのである。そういう観点から見れば、後期の(ファーストライブ以降の)チェキッ娘は、ファンとチェキッ娘とのストーリーの構築に送り手が介入する、どころか、送り手側が(勝手に)作ったストーリーを押し付ける、というおよそ思い付く限り最悪の展開を辿ってきたといえる。私にとっては、水口プロデューサーの「すばらしいストーリー」発言は、腹が立つどころか、気持ち悪くて聞いちゃいられないたぐいの発言だったのだ。これはもう、生理的嫌悪感というべきものだ。
こんな根の深い不信感を持っていれば、どうやっても感情など湧き起こるはずもなかった。…だがしかし、チェキッ娘の各メンバーに対しては別である。彼女達の姿を見たら、もしかしたら…という気がしないでもなかったのである。だからこそ、足を運んだのだから。そう思ってライブをじっとみていたのだが…ライブとはいっても、これではまるでテレビ番組である。しかも歌番組じゃなく、チェキッ娘の一年を振り返るドキュメンタリーのような。
歌の間に入るナレーションに流れはぶつ切りにされてしまい、その都度観客(そう、ステージと一体感なんかない、スタジオに座っている観覧客のように)は思い出にひたることをまさに"強制"されるのだ。こりゃ一体なんなんだろうか。ライブを見て「何を感じるか」は客が自らの意思で選択するものであり、送り手ごときに教えてもらわなくても、何を感じるのが正しいのかなんてことは自分がよく分かっているのだ。くだらないバラエティ番組のト書きのように「客(笑)」とか指図されなくても、だ。
…こうして、チェキッ娘のラストライブは終わってしまった。そう、私にとってはまさに「終わってしまった」だった。ステージと客席を見ながら、(私の不信感を揺るがすような)目頭が熱くなるようなシーンがありうるのかと、かすかな期待と共に見続けていた私にとっては。
ある程度、予測できた最後でもあったし、だからこそここ最近、チェキッ娘に対しての気持ちが盛り上がらなかったわけでもあったんですけどね……本当は良いほうに裏切って欲しかったんだが、まぁ、それも無理な願いだったと。チェキッ娘プロジェクトはこうして終わりました。旅立ったメンバーにとってはこれからが本番ですね。芸能界に残るメンバーはこれからも言及する機会があるでしょうから、今日はこれだけ。いままで本当にお疲れ様でした。そして、遊んでくれてサンキュー。